第一部では、歴史に蓄積した交流経験を顧み、知的資源を探るという意味で、まず東アジアに共有している伝統の一つとして儒學を取り上げた。北京師範大學の張濤教授は、中國起源の儒學が日本と朝鮮で更新と創造を得、中國に還流して中國の文化発展を促進することを語った。張昭軍教授は、中國、日本、朝鮮·韓國における儒學の多様性と相互影響と共有、および今日のグローバル化と生態危機に対処するための「調和共生」の知恵を分析した。また、中央アジアや西アジアとの交流にも話を進めた。王東平教授は、異なる文明の融合の成功例として、外來民族のムスリムと中國國內の民族とが相互交流によって回族を形成し、イスラームの中國化を推進しながら、アラビア、ペルシャ、中央アジアの文化を中國に伝播する歴史を語った。報告へのコメントとして、楊共楽教授は東アジア交流の歴史的経験を、文化の獨自性、多様性、開放、交流による文明発展という言葉で評した。新潟國際情報大學の高橋正樹教授は、東南アジアの視點から過去の冊封體製を顧み、中華世界の分権的な國內及び國際秩序形成のモデルを見出し、近代國民國家の形成過程で搾取と強権による支配が強められた政治秩序を克服するための示唆を説いた。
第二部では、近代へと時代を下り、近代西洋植民地主義の衝撃およびその影響による東アジア諸國関係の変化について議論を行った。新潟國際情報大學の越智敏夫教授は、西歐の國民國家形成に伴う植民地獲得、それを模倣した日本の近代化様式を分析し、またアジア諸國の近代化に関する民衆の自発的意思ないし反発意識への注目を説いた。吉澤文壽準教授は、日本の植民地支配の特徴として警察力·軍事力に支えられた暴力裝置を分析し、また國家権力によって人権を蹂躙された人々の連帯として、被侵略地域の人民と日本人戦爭被害者との連帯を提言した。また、北京師範大學の王開璽教授は、外交が君主のみに屬す中國の外交伝統が近代西洋諸國との外交で衝突を起こし、その衝突によって中國外交の近代化が促進されたことを述べた。史革新教授は、日清戦爭での清朝敗北をきっかけに、中國の知識人が日本の改革に學ぶ必要を認め、「東學」という用語に象徴されたように、日本を経由して近代化を學ぶ思潮が生まれたことを語り、日中文化交流の方向変化を分析した。報告へのコメントとして、孫燕京教授は両國研究者の視點と理論の相違點をまとめ、また植民地主義の問題と関連しながら、西歐基準の近代化概念と道の捉え方に疑問を示した。新潟國際情報大學の小山田紀子教授は、日本が手本とした西歐の國民國家の植民地獲得競爭や、脫植民地化後の移民問題に見られる人種差別の継続などの問題を指摘した。
第三部では、冷戦とポスト冷戦を経た今日の切迫した問題へ進み、東アジア諸國の対立の重要要因である歴史認識、経済協力、國際関係について問題分析と意見交換を行った。まず今日の東アジア諸國対立の要因の一つである歴史認識問題について、新潟國際情報大學の小林元裕準教授は、1980年代以來の右傾化に見える歴史教科書批判や「新しい歴史教科書をつくる會」などの歴史教科書問題を、家永教科書裁判への反発として起きた現象として捉え、家永教科書裁判の役割への評価を主張した。北京師範大學の鄭林副教授は中國の改革開放以來、東アジア諸國との歴史教育國際交流の中で日本との交流が最も多かったことを述べ、その成果と不足點を分析した。またポスト冷戦期の経済協力と國際関係について、李誌英教授は、冷戦終結後の日中経済交流発展に伴い中國崩壊論や中國脅威論も高くなったが、両國の経済協力において競爭より互恵の部分が多いとし、日本の中國市場參入の利點を語った。新潟國際情報大學の小澤治子教授は、冷戦終結後の東アジアの國際関係動向を分析し、冷戦復活の可能性を否定しながら、冷戦の殘滓克服の方向性を説いた。報告へのコメントとして、北京師範大學の唐利國講師は、中日の近代化比較における成敗論の問題性を指摘し、多様な発展モデルを認めて新しい協力関係を確立するよう提言した。新潟國際情報大學の安藤潤準教授は日中経済協力について、中國市場で活動する日本企業の増加によって中國やアジアで経済格差拡大を作り出される可能性について危懼を示した。