信頼·互恵·共生—相互理解 の下で東アジアの協力を図る—
新潟國際情報大學教授 區建英
本書は中日國際シンポジウム:「東アジア地域交流の歴史的変遷と発展狀況」の內容を元にして編集したものである。この國際シンポジウムは、新潟國際情報大學が主催し、新潟県·新潟市が後援となり、2008年7月12日~13日に新潟市中央區·新潟國際情報大學の中央キャンパスで開催された。新潟國際情報大學の提攜校である北京師範大學歴史學院から10名の教員をパネリストとして招き、また新潟県內外から他國籍の參加者も含めて約130名の方々にご出席頂き、多角的な講演と活発な討論を行うことができた。
今回の國際シンポジウムは、新潟國際情報大學情報文化學部と北京師範大學歴史學院とが今まで8年間にわたる教育交流の成果を踏まえた一つの新しい試みである。かつて1999年12月に、本學情報文化學部長·日本著名なジャーナリスト·故石川真澄先生をはじめとする教職員一行が北京師範大學歴史係を訪問した。その訪問において、石川先生は東アジア諸國関係の回顧と展望というテーマで講演を行い、日中両國の若い世代の相互交流を促進するための派遣留學構想を提起した。この構想は北京師範大學の共感と賛同を得た。そして、翌年の2000年4月に、雙方の間で提攜交流協定を締結し、同年9月から、新潟國際情報大學は、北京師範大學歴史係に半年の留學として學生を派遣し、翌年から、この派遣留學を製度化した。
派遣留學は非常に良好な教育効果をもたらし、參加學生の保護者からも高い評価を得た。留學參加學生は半年の北京生活において、中國語と中國社會文化を學習するばかりでなく、中國人學生と広く交流し、現地の市民とも接觸する機會を得た。留學を通じて同世代の中國青年をはじめ中國人と友情を結んだことは大きな意味を持っている。2004年~2006年は日中関係が悪化した時期であったが、現地で中國人の暖かい友情を體験した留學參加學生は、自らの體験を日本にいる友人に伝え、市民レベルで日中友好の架け橋として役割を果たした。8年間の派遣留學の成果を蓄積した上、國際教育交流を國際學術交流へと発展させようとして今回のシンポジウムを試みたのである。
ここで、私は企畫·実施の責任者の一人として、中日國際シンポジウムを全體的に捉えて、読者に紹介させていただきたい。
この國際シンポジウムは一般の學會と異なって、內容の構成を予め構想したものである。「東アジア地域交流の歴史的変遷と発展狀況」というテーマを選んだのは、1999年石川真澄先生が北京師範大學歴史係で行った東アジア諸國関係についての講演の初誌を継承し、地域協力という21世紀の時代的課題に対応する大學の有り方と研究者の役割を模索するためである。また、雙方教員の専門の多様性を生かし、その多様性を有機的関連のある內容に構成するよう考案した。北京師範大學の教員は歴史學に造詣があり、新潟國際情報大學の教員は國際関係學、政治學、経済學、歴史學などの分野に造詣がある。これに鑑み、歴史的回顧と近現代の諸問題の検討をともに視野に入れ、三つの部會を分けた。第1部は「19世紀半ば以前の東アジアの地域交流」、第2部は「近代西洋植民地主義の衝撃による東アジア諸國の関係変化」、第3部は「冷戦とポスト冷戦の東アジアの地域交流」であり、最後に総合部を設け、學際的な討議を目指した。
また、學術性を重視すると同時に、啓蒙性と実踐的課題にも配慮した。シンポジウムの冒頭に、新潟國際情報大學長·平山征夫先生の特別講演を入れたのは、平山先生がかつて12年間新潟県知事を勤め、「北東アジア経済圏構想」の推進に取り組んだ実踐的體験を持っているからである。このシンポジウムは、単に専門學者だけの討議ではなく、一般の學生や市民も自由參加できるように公開した。したがって、國際的な學術交流であると同時に、國際的な人民交流という意味を兼ねている。