臼井陽一郎:
まず簡単に二點だけコメントさせていただきたいと思います。機能的な協力、「もうかりまっか?」に進めなきゃいけない、その通りであります。それからもう一つ、私事になりますが、過去三年間、東アジア共同體憲章、チャーターを作ろうというそういう研究プロジェクトを他の大學の方々とやってきました。その過程で先ほど申しました、ASEAN+3の13カ國が調印している條約を全部調べました。それから13カ國の憲法を全部調べました。ただ一部憲法を持ってない國もあるんですが、それは除きまして全部調べました。こうしてASEAN+3の13カ國が加盟しているすべての條約と、各國の憲法のすべてを調べますと、「ヒューマンライツ」、「人権」というのは誤解を恐れずあえて言えば、アジアのキーワードであるとさえ言えそうです。
その調査の過程で元ASEAN事務局長のセベリーノさんという方にインタビューすることができました。そのかつてのASEANの事務局のトップの方がこう言っておりました「人権という限りにおいてはアジアの政治家の誰一人が反対しない。」つまり人権というとアジアが乗ってくれないというのは実は日本人の思いあがりだったとさえいえるかもしれません。もちろん、人権をどう実現していくか、実現の方法、製度についてはヨーロッパと違います。しかし実現されるべき人権についてはASEAN10カ國と日、中、韓すべてが共有しております。キーワードは「理念」「アイデア」からどう実行に移すか、「from the idea to practices」だと。その「理念」から実行へ移していく共同の枠組みを東アジアの中に作っていかなきゃいけない、そのために日本と中國と韓國とASEAN10カ國が協力をしていかなきゃいけないということだと思います。ありがとうございます。
越智敏夫:
今の臼井さんのコメントに対してパネリストの方で意見を提起したいという方はいますか。もしいらっしゃらなければ、その経済的な交流と、さきほど佐々木さんから指摘のあった「人権による統合」、これは臼井さんのコメントでいえば「実行の枠組み」ということになると思いますが、この點に関して日中経済関係について報告された李さん、何かございませんでしょうか。
李誌英(區建英 訳)
経済発展でまず解決しなければならないのは人間の生存の問題だと思います。経済発展の理論において、経済學者は確かにまず利潤最大化を言っていますが、その他に、経済発展の公平、公正について議論する學者も多いです。この二つの問題はアダム·スミスの時代にはすでに取り上げられました。日本の経済は1960年代以降、高度成長を遂げ、人民の生活レベルは普遍的に高くなっていますので、生存の問題はそれほど重要ではないようです。一方、中國の狀況は日本と違って、生存の問題が依然として最重要な問題だと思います。ついでに先ほどの安藤先生のご質問に答えたいです。
安藤先生のご質問は、「日本企業が中國に進出することによって、新しい経済格差が生まれたのか」ということでよろしいですか。この點については、歴史的に見なければならないと思います。日本企業や日本の資金が中國に入ったのは、主に中國の改革開放政策が実施した後です。冷戦の終結につれて日本企業の中國進出の規模は日増しに拡大しました。日本が中國に投資するのは一方、中國に資金と技術をもたらし、中國の経済発展に積極的な役割を果たしました。他方、日本の経済発展にも機會をもたらし、日本経済の増長に助力しました。2008年は中國の改革開放30周年を迎えました。この30年間、中日の間の経済格差が次第に縮まってきまし。日本企業の投資によって、中國は資本と技術だけではなく、経営のノウハウをも得ることができました。このため、中國人は日本からたくさんの経験を學ぶことができます。中國人として日本に感謝しなければならないと思います。以上は簡単ながら私の答えです。ありがとうございます。
越智敏夫:
ありがとうございました。今のお答えに対して安藤さん、何かありますか。
安藤潤
中國の経済発展は目覚しいものがあると思いますし、今、先生から「日本の企業から経営のノウハウを中國の企業が學んだ」とおっしゃられましたが、むしろ最近ですと日本の企業経営者の方が中國の企業経営者から経営のノウハウを學ぶこともあるようですし、企業経営の麵での交流というのは、一方向だけではなく雙方向で進んできたのだと思いますし、企業間ではそういった交流も雙方向でもっと活発になっていくのではないかと思います。